キダカミ主催懇話会「多様な視点で考える図書系職員のこれから」レポート

概要

  • 主催:国立大学図書館協会近畿地区協会助成事業 「きみが大学図書館を変えてみないか」(通称「キダカミ」)
  • 実施日:2026年1月26日(月) 14:30~16:00
  • 実施方法:オンライン(配信会場:大阪大学総合図書館 図書館ホール)
  • テーマ:多様な視点で考える図書系職員のこれから
  • 対象:国立大学図書館協会近畿地区協会会員館に所属する係長・主任・係員級の職員
  • 登壇者(敬称略):
    • 村上 正行氏(大阪大学 全学教育推進機構 教育学習支援部 教授)
    • 貝原 亮氏(大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター 相談支援部門アクセシビリティ支援室 特任研究員)
    • 檜原 啓一氏(大阪大学附属図書館箕面図書館課長(兼)箕面市立船場図書館長)

 大学図書館の在り方が問われる中で、図書館の課題や未来について多角的に検討し、教育・研究・地域連携活動を展開する大学の一組織として求められる役割を果たしていくためには、「図書系職員」という枠を超えた視点も持つことが必要ではないでしょうか。そこで今回は「図書系職員以外の視点」に焦点を絞って、多様な立場から大学図書館と図書系職員を捉え直し、現状を変えるための具体的なアクションを考えることを目標に、本懇話会を企画しました。

 まず前半のトークセッションでは、教員・研究者、事務職員・学生支援経験者、公共図書館経験者をお招きし、それぞれの立場から見た図書系職員像や大学図書館についてお話を伺いました。

トークセッション

 参加者の事前アンケートで寄せられた質問の中から、「大学図書館・図書系職員の見え方」、「外からの視点」、「大学図書館の課題と変革」という3つのテーマに沿ってお話しいただきました。

①大学図書館・図書系職員の見え方

他部署から見た図書館は?

貝原研究員:
(大学事務職員経験のある立場からすると)事務の中でも人事・財務……と様々な仕事があり、図書系だけが事務職員から見えていないというわけでもないのでは?と思います。自分たちがどう見られているかわからないという点は、図書系の皆さんが事務職員をどのように見ているかとあわせて考えていただければ。
図書系は事務職員と採用・異動の流れが異なり、業務上もなかなか接点がありませんが、大学職員全般で見ると、事務職員同士としか接点のない職員も多い中、学生とも教員とも接する図書館って、とても魅力的だと思います。

貝原 亮氏(大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター 相談支援部門アクセシビリティ支援室 特任研究員)

村上教授:
職員さんからは、教員も何をやっているかわからないかもしれません。図書館の学習支援・研究支援では、教員・研究者と図書館とで、それぞれ何が必要なのかを擦り合わせ、ズレを埋め合わせていくことが一つのポイントだと思います。

檜原課長:
人事異動の違いなどから図書系は事務職員との繋がりが薄いです。また図書系は大人しい人が多いというのもあるかもしれませんが、他系の業務を知ることとあわせて、図書館から外へ一歩二歩踏み出していくことが大事だと思っています。

図書館業務の変化とその印象

村上教授:
OAの対応など研究者側もあまり分かっていなくて。図書館の人に聞きたいところはありますが、なかなかつながりがなく、どのように情報共有・情報交換できるのかな?と思っています。

貝原研究員:
今までは「図書館に」資料を集めて保存し提供するという内向きのベクトルだったと思います。それがOA・OSで、持っているものをいかに繋げて発信していくかという外向きのベクトルが加わってきて、求められる役割や能力も変わり、皆さんが葛藤しているんじゃないかと思いました。

 教員や他部署との連携・コミュニケーションが課題であること、また外から見て図書館が「わからない」のと同じくらい、図書館も相手のことは「わかっていない」のだと気づかされるお話でした。

 続いて「外からの視点」をテーマに、公共図書館・研究者の視点で見た大学図書館についてお話しいただきました。

②外からの視点

公共図書館から見た大学図書館は?

檜原課長:
公共図書館からは大学図書館が視野に入っていないことがあり、大学図書館から歩み寄ることが必要です。公共図書館はサービス対象が広いということで、例えばバリアフリーの考え方などは参考になるところがあると思います。

研究者視点では?

村上教授:
学習支援については、教員や教務系の部署との連携をいかに取るかです。アクションを起こさない限り、連携は生まれません。現場レベルでいかに繋がっていけるかがポイントです。研究支援に関しては先ほどお話しした通り、いかにお互いのニーズを擦り合わせていけるかです。
私立大学ではラーニング・コモンズを教務系の部署が運営するケースが多いですが、国立大学では図書館であることが多く、図書館の特性は活かせている一方、教務系の部署との関わりが薄い可能性があります。まずは連携できそうなところからやる、研究面であれば図書館と関わりの多い分野から着手するのが良いのではないでしょうか。

村上 正行氏(大阪大学 全学教育推進機構 教育学習支援部 教授)

③大学図書館の課題と変革

 参加者事前アンケートからは、皆さんが業務改善・効率化や教員・他部署との連携など、様々な悩みを抱えて仕事をしていることが伺えました。登壇者の皆様にも参加者の声をご紹介した上で、図書館の「弱み」について伺いました。

大学図書館の弱みは?

貝原研究員:
OSにも携わっている図書館は、学内でも「より最先端研究のフロンティアに立っている」と言えるのではと思います。自身の強みを分かっていないこと、それをアピールできていないことが弱みではないでしょうか。
公共政策的な視点から見ると、「図書館」は利潤が生まれないので、競争市場では成立しません(公共財と言います)。だから行政機関や大学が提供しています。コストがかかることを批判的に捉えられがちですが、図書館の意味を考えたとき「はい。私たちはお金を使う組織です。それを理解したうえで、いかにサービスするかを考えているんだ」と堂々と言えることがあるのではないでしょうか。

檜原課長:
我々は実は学術情報流通の最先端に立っているはずですが、その自負・覚悟がないのではと思います。最先端に立ってOA等の必要性を訴えていかなければならないという、いわば尖った気概があれば学内でも専門家と思ってもらえるのではないかと。尖ろうとしていないのが弱みではないでしょうか。

檜原 啓一氏(大阪大学附属図書館箕面図書館課長(兼)箕面市立船場図書館長)

村上教授:
連携の問題にも繋がりますが、アウトリーチ=図書館の活動を外に伝えることが必要です。強みは自分では分からないですが、アウトリーチの過程で他者からのフィードバックを受けて、気づくと思います。

 そしていよいよ最後の質問はこちら。今まさに「変えよう」とする私たちへのアドバイスをいただきました。

大学図書館職員像をリシェイプしようとする大学図書館職員をコンサルするとしたら、どのようなアドバイスをされますか?

檜原課長:
「上から言われたから」という「やらされ感」でやるのではなく、例えばOA推進の先にどういった学術情報流通があるかなど、その先の世界を想像して自分の仕事の意味を考えてほしいと思います。

村上教授:
檜原課長の話を受けると、自分事として消化して腑に落とせるかがポイントだと思います。

貝原研究員:
「変わりたい」以前に「変わらなければならない」危機感をどこまで認識しているか?です。OAを突き詰めると「その資料がどこにあっても良い」ことになります。「○○大学附属図書館」として残るための独自性・差別化をどう図っていくかは、若手職員が考えなければならないと思います。

 図書系職員には何が求められているのか?今後どうあるべきなのか?――普段、図書館の中だけでは知ることができない、外からの様々なご意見を伺い、私たち自身を見直す機会となったトークセッションでした。登壇者の皆様、ありがとうございました!

意見交換会

 後半は意見交換会を行い、19名の参加者が5グループに分かれ、現状の課題とそれを変えるためのアクションやアイデアを30分間話し合いました。その後、話し合った内容を全体に発表するアイデアシェアを行い、「事務職員との意思疎通が課題。キャンパスや小さなまとまり単位で、仕事内容を事務職員や同世代向けに説明する機会を設ける」といった具体的なアクションや、「細かい仕事は効率化し、浮いた時間をアウトリーチや教育・研究の現場に回せると良い」などの意見が共有されました。

 これを受けて登壇者からは「相手を理解したり自分のことを分かってもらったりするのはコミュニケーションから。その着実な一歩になって良かった」「事務職員と動くときの秘訣は『緩やかに』。サステイナブルな方法を考えると良い」といったフィードバックや、「こうした企画はその時だけになってしまいがち。ちょっとでも良いからすぐにやってほしい。遅くとも今年度中にアクションを起こしてもらえたら!」という激励もいただきました。

 最後に、キダカミ実行委員会主査でもある檜原課長から閉会のコメントがあり、懇話会は幕を閉じました。

 多様な視点から大学図書館・図書系職員を見つめなおした今回の企画。参加者やこのレポートを読んでくださった皆様にとって、新たな気づき・ヒントを得る機会になりましたら幸いです。

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